2013年6月27日木曜日

雨の糸をたどるように








雨の糸をたどるように歩いていたら、いくつかの言葉と会いました。傘の中に招きいれたら、しぜん距離が縮まって、なんだか離れがたくなりました。わたしを待っていた、懐かしい、慕わしい人のような、そんな顔をした言葉たち。

雨の日に書かれた言葉とは、つまりは日付のある言葉、日記や手紙の言葉です。そういう言葉は、囁きや呟きのように、耳の近くで響くので、身体にすうっと染みこんでくるのです。そして身体の中から、また聞こえてきます。
こうして、だれかの言葉が、わたしの言葉になりました。

だから昨日、つよく降る雨を見ながら、濡れて沈んだ町にむかってつぶやいたとしても、けして不思議はないのです。「眼に映るもの悉く雨に濡れたり」。およそ百年前、ある雨の日に生きていた「わたし」が、日記に書いた言葉です。

あつめた言葉はすべて、活版印刷で刷りました。かつてノートや便箋に書かれた言葉が、いつか刷られて本になってここに届いて、その言葉がまた鉛の活字になって刷られて本になって、今度はどこに、どこかに、届くでしょうか。

いつか陶芸家の友人が書いていた言葉を、思い出します。水についての言葉でした。湧き水が流れて川へ、海へ、また雨となって地に染みて清らかな水になる話。そんな循環が感じられる場所で、水に、土に触れているのが、心地よいと。

言葉も水のように、湧いて、流れて、降って、染みて、また湧いてくるものならば、わたしもまた、清らかな水のような言葉に、ただ触れていられたら、と思います。水が生命にとってなくてはならないものであるのと同様に、言葉も人をはぐくみ、潤すもの、本はその器であることを、いつでも感じていられる、静かな、心地のよい場所で。




森雅代さんの銅版画は、柔らかに降りそそぐ雨のように、遠い雨の日の記憶のように、にじんだり、かすんだり、ゆらいだり。それらの絵と、言葉をならべて、本をつくりました。日記でもあり、手紙でもあり、作品集でもあり、物語でもあり、詩でもある本。そうなっていたらよいな、ということです。

この本、『雨の日』には、銅版画がひとつ、付いています。それは一冊一冊、異なっています。お好きなものを、選んでいただけますように。

会期も残すところ4日となりました。
雨の日でも晴れの日でも、いらしていただけたらうれしいです。
森雅代+ヒロイヨミ社の「雨の日」、6月30日(日)まで、高円寺・書肆サイコロにて開催中です。





追伸 今日は、暑い、晴れの日です。いまのところ 

2013年6月4日火曜日

雨の日とマルシェ






いつまにか、6月になっていました。
今月は、穴から飛びだして、あれこれやります。

まず、今週末のイベントから。

「アトリエとキッチンのマルシェ」というイベントに参加します。ヒロイヨミ社やananas pressの本といっしょに、お待ちしています。おもしろそうな人や物にたくさん会えそうで、わたし自身たのしみです。
馬喰町界隈です、よろしかったらぜひお出かけください。


アトリエとキッチンのマルシェ
日時:6月8日(土)・9日(日)11:00~18:00
会場:CreativeHub131(東京都中央区日本橋大伝馬町13-1)
詳細はこちらをご覧ください。

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それから、書肆サイコロで、森雅代さんと展示をやります。
自分自身の展示は、2年前の冬の「活版とことば」以来なので、どうなることか、とにかく今は、無事に印刷ができるように、と思っています。
あとは、期間中に、のみすぎないようにしたいです。


雨の日

2013年6月15日(土)〜30日(日)
(※月・火休廊)
open:13:00-20:00
最終日19:00まで

森雅代……銅版画
山元伸子(ヒロイヨミ社)……言葉

雨を描いた銅版画と、雨の日に書かれた言葉を展示します。
あわせて、200部限定の本『雨の日』を発売します。

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6月22日(土)20時より
津田貴司ライブ「露草フォノグラフィ」

フォノグラフィとは、音による写真、音で描く絵画、といったところでしょうか。
「雨の日」のことばと版画に寄り添うように、露草の青や磨りガラスの雨、遠い日の海の音を描きます。
(サウンドアーティスト・津田貴司)

1500円(1ドリンク付)
ご予約は書肆サイコロまで


ライブでは、すこし(ふるえながら)言葉を読んだりもします。
津田さんのじゃまにならないようにしたいです。

そんなわけで、もろもろ、どうぞよろしくお願いします。
どこかでお会いできればさいわいです。

梅雨に入りましたが、雨がすくなくて、紫陽花もカラリと咲いています。
これはこれで綺麗ですが、やはり、雨に濡れた、妖婦のような紫陽花が好きです。

今日も暑くなるみたいですが、どうぞよい初夏の日をお過ごしください。


追伸 高円寺にビアガーデンはないのでしょうか