2013年12月1日日曜日

貘展




今月7日から書肆サイコロで開催される、山之口貘さんの展覧会「貘展」に参加します。貘さんの本や原稿などの展示と、貘さんの詩をテーマにした作品の展示です。参加者や関連イベントの情報など、くわしくはこちら、書肆サイコロのサイトをごらんください。


ヒロイヨミ社は三篇の詩を活版で刷り、その詩についての文章を3人の方にお願いして、冊子に仕立てました。執筆者は秋葉直哉さん、宮浦杏一さん、永岡大輔さんです。

「貘」というアルバムはかねてより愛聴していましたが、詩をじっくり読むのは今回がはじめてで、制作にあたって、どうしたものかと、かなりなやみました。でも結局、いまの自分がその詩に応えるなら、この形しかないだろう、というものになりました。
いや、正直にいうと、まだできていないので、わからないですが。

詩がわかった、というのは、意味がわかったということではない。浸透圧のように、詩のほうから、何かがこちらの内部に染み入ってくること。自分のなかからも出ていくものがあること。                            (小池昌代『散文集 産屋』より)

今年は展示の機会がわりと多かったので、たくさん本(というか、冊子)を作りましたが、これですこし区切りをつけたい、つけられる、と思っています。染み入ってきたものを、時間をかけて見きわめ、形にしてみたいです。どんな形かは、いまはまだ、わかりません。わからないことばかりです。

貘さんの「生きることと詩を書くことが等しい詩作の姿勢」と、その詩を深く愛する人たちの思いにふれられたことに、感謝しながら、もすこしがんばります。

12月、おいそがしい方も多いと思いますが、お時間ありましたら、ぜひお越しください。
どうぞよろしくお願いいたします。


追伸 濱野太郎さんのDMをデザインしました。展示がたのしみです。ヨシコさんのお菓子もたべたいです。

2013年11月7日木曜日

蒐集記




ギャラリーみずのそらにて、グループ展「蒐集記」開催中です。くわしくはこちらをごらんください。

ヒロイヨミ社では『夜の詩集』『月の句集』『恋の歌集』をつくりました。
テーマにあわせて、いろんな本文紙をえらび、好きな色で刷りました。
濃紺の紙に金インキで刷った『月の句集』を気に入ってくださるかたが多いようです。うれしいです。
こんな俳句をえらびました。

黒き月のせて三日月いつまで冬   三鬼

展示をなかばを過ぎて、あと3日です。
今回はcohakoさんの古道具もお借りして、よりしっとり、落ちついた空間になったように思います。
今度の日曜まで開催しています。
お時間ありましたら、ぜひお出かけください。

冬がはじまりました。
暗くなるのもはやくなって、長い夜を、今日はどんなふうに過ごすかといえば、もちろん仕掛品の製本です。


追伸 ヒロイヨミ社のブログ更新係は、すぐ失踪してしまいます

2013年6月27日木曜日

雨の糸をたどるように








雨の糸をたどるように歩いていたら、いくつかの言葉と会いました。傘の中に招きいれたら、しぜん距離が縮まって、なんだか離れがたくなりました。わたしを待っていた、懐かしい、慕わしい人のような、そんな顔をした言葉たち。

雨の日に書かれた言葉とは、つまりは日付のある言葉、日記や手紙の言葉です。そういう言葉は、囁きや呟きのように、耳の近くで響くので、身体にすうっと染みこんでくるのです。そして身体の中から、また聞こえてきます。
こうして、だれかの言葉が、わたしの言葉になりました。

だから昨日、つよく降る雨を見ながら、濡れて沈んだ町にむかってつぶやいたとしても、けして不思議はないのです。「眼に映るもの悉く雨に濡れたり」。およそ百年前、ある雨の日に生きていた「わたし」が、日記に書いた言葉です。

あつめた言葉はすべて、活版印刷で刷りました。かつてノートや便箋に書かれた言葉が、いつか刷られて本になってここに届いて、その言葉がまた鉛の活字になって刷られて本になって、今度はどこに、どこかに、届くでしょうか。

いつか陶芸家の友人が書いていた言葉を、思い出します。水についての言葉でした。湧き水が流れて川へ、海へ、また雨となって地に染みて清らかな水になる話。そんな循環が感じられる場所で、水に、土に触れているのが、心地よいと。

言葉も水のように、湧いて、流れて、降って、染みて、また湧いてくるものならば、わたしもまた、清らかな水のような言葉に、ただ触れていられたら、と思います。水が生命にとってなくてはならないものであるのと同様に、言葉も人をはぐくみ、潤すもの、本はその器であることを、いつでも感じていられる、静かな、心地のよい場所で。




森雅代さんの銅版画は、柔らかに降りそそぐ雨のように、遠い雨の日の記憶のように、にじんだり、かすんだり、ゆらいだり。それらの絵と、言葉をならべて、本をつくりました。日記でもあり、手紙でもあり、作品集でもあり、物語でもあり、詩でもある本。そうなっていたらよいな、ということです。

この本、『雨の日』には、銅版画がひとつ、付いています。それは一冊一冊、異なっています。お好きなものを、選んでいただけますように。

会期も残すところ4日となりました。
雨の日でも晴れの日でも、いらしていただけたらうれしいです。
森雅代+ヒロイヨミ社の「雨の日」、6月30日(日)まで、高円寺・書肆サイコロにて開催中です。





追伸 今日は、暑い、晴れの日です。いまのところ 

2013年6月4日火曜日

雨の日とマルシェ






いつまにか、6月になっていました。
今月は、穴から飛びだして、あれこれやります。

まず、今週末のイベントから。

「アトリエとキッチンのマルシェ」というイベントに参加します。ヒロイヨミ社やananas pressの本といっしょに、お待ちしています。おもしろそうな人や物にたくさん会えそうで、わたし自身たのしみです。
馬喰町界隈です、よろしかったらぜひお出かけください。


アトリエとキッチンのマルシェ
日時:6月8日(土)・9日(日)11:00~18:00
会場:CreativeHub131(東京都中央区日本橋大伝馬町13-1)
詳細はこちらをご覧ください。

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それから、書肆サイコロで、森雅代さんと展示をやります。
自分自身の展示は、2年前の冬の「活版とことば」以来なので、どうなることか、とにかく今は、無事に印刷ができるように、と思っています。
あとは、期間中に、のみすぎないようにしたいです。


雨の日

2013年6月15日(土)〜30日(日)
(※月・火休廊)
open:13:00-20:00
最終日19:00まで

森雅代……銅版画
山元伸子(ヒロイヨミ社)……言葉

雨を描いた銅版画と、雨の日に書かれた言葉を展示します。
あわせて、200部限定の本『雨の日』を発売します。

……………………

6月22日(土)20時より
津田貴司ライブ「露草フォノグラフィ」

フォノグラフィとは、音による写真、音で描く絵画、といったところでしょうか。
「雨の日」のことばと版画に寄り添うように、露草の青や磨りガラスの雨、遠い日の海の音を描きます。
(サウンドアーティスト・津田貴司)

1500円(1ドリンク付)
ご予約は書肆サイコロまで


ライブでは、すこし(ふるえながら)言葉を読んだりもします。
津田さんのじゃまにならないようにしたいです。

そんなわけで、もろもろ、どうぞよろしくお願いします。
どこかでお会いできればさいわいです。

梅雨に入りましたが、雨がすくなくて、紫陽花もカラリと咲いています。
これはこれで綺麗ですが、やはり、雨に濡れた、妖婦のような紫陽花が好きです。

今日も暑くなるみたいですが、どうぞよい初夏の日をお過ごしください。


追伸 高円寺にビアガーデンはないのでしょうか 

2013年4月2日火曜日

春の詩集




4月なのに、とても寒い雨の日です。今年の桜とも、いよいよ、さようなら、でしょうか。さみしいような、ほっとするような。咲いているあいだは、どうしても気になるものですから。
どうせ別れるなら、ありがとう、ではまた来年お会いしましょう、とさわやかに別れたいと思います。何事も、できるだけ、さわやかに。ほんとうは、ずるずるべたべたしたにんげんだからこそ。

それにしても、来年。そのころには、どこでどうしているのか、見当もつきません。いつのまにやら、そんなふうです。桜の花びらみたいに、風にのってどこまでも飛んでいくことも、できるのです。たぶん。

さて、この春、『春の詩集』をつくりました。
立原道造、中原中也、山村暮鳥らの春の詩が7篇と、秋葉直哉さんの文章をおさめました。秋葉さんは流水書房青山店にいらした方、「WEB本の雑誌」で本について書かれたものを読むこともできます。ツイッターでも本のことや日常のこと、書かれていますが、名前ははずかしいから出さないそうですので、ここでは控えます。もうみんな知ってるじゃない、といってるんですけれど。

表紙の紙は、ふわふわしっとりした不思議な紙、NTスフールです。さわった瞬間、ああ、この紙……。と思いました。手はこういうものをさわりたかった。生まれたてのやわらかなひとの肌にも、似ているような気がしました。
扉はポルカレイドのメレンゲ色、本文用紙はポルカのトウフ色です。紙の名前も色の名前も愛らしくて、たのしくなります。わりとあたらしい紙を使いました。

活版印刷、16頁、2200円(税込)です。

現在取り扱っていただいているお店は、以下です。
どこかでお手にとって見ていただけたら、うれしいです。

〈東京〉
書肆サイコロ(高円寺)
森岡書店(茅場町)
B&B(下北沢)
ギャラリーみずのそら(西荻窪)
SHIBUYA PUBLISHING BOOKSELLERS(渋谷)

〈神奈川〉

〈名古屋〉
ON READING(東山)

〈京都〉
恵文社一乗寺店(一乗寺)

〈山口〉
ロバの本屋(俵山)

〈徳島〉
uta no tane(徳島)

〈沖縄〉
言事堂(那覇)


取り扱っていただけるお店のかた、いらっしゃいましたら、見本をお送りいたします。
直接販売もいたします。メールでお知らせください。
yamamotonobuko122*yahoo.co.jp
(*を@に変えて送信してください。)

それではよろしくお願いいたします。
どうぞ、よい春を。


追伸 濁り酒が好き、というと、酒は濁ってても心が澄んでればいいよね、だって。そうね。

2013年2月16日土曜日

春と空





美肌室ソラのブログで、『恋文』を紹介していただきました。メールのやりとりをして、お誘いいただいて、こんなに『恋文』を気に入ってくださるかたは、どんなかたなのかしら?と、ドキドキしながら、店主のノブコさんに会いにいってきました。おなじ名前、それだけでなんとなく親しみが増すのは、なぜでしょう。

そこは、明るくてかろやかで透きとおった風が流れている、空によく似た場所でした。着いたそばからふわふわ、雲の上を歩いているよう。妖精みたいな雰囲気の、ノブコさんのせいかもしれません。そして、そのやさしい手で触れられたら、とっても心があたたかく、やわらかく、あたらしくなりました。もちろん肌も。さみしい人や乾いた人、疲れた人に、特におすすめいたします。

はじめて会った人といろいろな話をして、ふわふわした気分のまま、別の人に会いに、別の場所へ。長びく寒さでこころが折れそうなので、春の本をつくる計画です。この人も妖精みたい。本の妖精。もっと本を読みたい、そう思わせてくれる人が、わたしは好きです。

寒い寒い日が続きますが、春が来るのだ、と少し思ってみるだけで、どこかからふわりと風が吹いてきて、今より高いところへ、空に近い場所へ、ひきあげられるような気がします。

わたしには、ゴツゴツした、不器用に動く手しかないけれど、この手で、だれかの心をあたたかく、やわらかく、あたらしくしてあげられる美しい春の本が、きっと作れますように。だれかに言葉が、届きますように。

Fさん、Fさん!
春がきました。

(山村暮鳥「春と生物」より)


追伸 そのあと紀伊國屋でクリオネちゃんにバッタリ。かまフェスで知りあった、大学生のクリオネちゃん、いつもパタパタ。